きみがぼくに、その街を教えてくれた。
その大会の午後、ぼくらは砂の匂いを嗅ぎながら、グラウンドに集まっていた。優勝決定の瞬間に立ち会っていた。
きみは黄色いユニフォームに黒い、やや短めのパンツをはいていた。握ったモルックを前後に揺さぶりながら、真っ直ぐに数字の入った木製のピンに眼差しを向ける。
どこに置いてあるか分からないスピーカーから、カリフォルニアガールズが流れている。(少なくともぼくにはそう聞こえた)しかしながら誰もが聞いていないのかもしれない。あるいは。
意味がなければスイングしない。地面から照り返す暑さを感じていると、数日前の記憶が蘇ってきた。
「地理的にも場所的にも、次の開催地は東海でやりましょう。」
誰かが言ったのだが、それは誰かは分からない。
歓声が上がって我にかえる。
ピンが倒れ、まるで「ラッカ星人」みたいに力強く立っている船橋。後は吉本新喜劇のように倒れたいのを我慢しているようだった。
「次はチバだね」
「それは困ったね」ぼくは何かを考えるように手のひらで長いあいだ頭をさすっていた。
やれやれ、次回はチバなら浦安あたりでも行ってミッキーの耳でもつけて遊んでも良いのかなと、ぼくは思った。でも黄色いユニフォームを着てはしゃぐ、ふなばしモルック部をみているうちに、アトラクションに並ぶ幻想を抱いたりすることが、きわめて不適切な事であるように思えてきた。何故かは自分でもよくわからないけれど、キャプテンEOにまた行きたいなどという考えを起こしたこと自体を、恥じた。
モルック大会には参加してもいいし、しなくてもいい、でもぼくは参加することにした、ぼくがこう決意した時、会場のBGMがオブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダに変わった。
ケアマネジャー(あるいは介護)職はモルックを投げ、皆がとても当たらないであろうピンを狙い投げあう。モルックとはある意味虚しく、それでいて実りのある行為に違いない。
あれ?
BGM.って、大事マンブラザーズでしたっけ?
優勝、本当におめでとうございます。
ひで