死ぬまでハサミは持っていたいな
初めてお会いした時そんな言葉をおっしゃられた現役の理容師さん。
お弟子さんを何人も抱える人気の理髪店で、当時は家族も含め10人以上で暮らしてきたご自宅兼店舗。
この数年、いくつかのご病気が見つかり手の震えや足の痺れで歩くのもやっと。
でも、そこはやはり60年のキャリアがあるプロの理容師さん。
ハサミを持つと表情が変わり手足の痛みや痺れはピタっと止まり、今もなお常連のお客様をきれいに仕上げられる
ただ1つだけ
少し思い出せないことや理美容以外の好きだった事に意欲が無くなってしまったのだとご家族様。
食事作りが大好きで10人を超えるお弟子さんやご家族にご飯を作ることがとにかく生き甲斐だったのだと。
『何もかもがめんどくさくてね』
そう言われ買い物や料理もすっかり遠のき、作ることも無くなってしまった頃にご相談をいただきました。
デイサービスのご利用を開始し久しぶりのカラオケや同年代との会話や、人生初だと言われるリハビリ体操。
若いスタッフに人生経験を教えてあげたりご自分の生き様。
そんなお話や笑顔の時間を過ごしたことで、消えかけていた『意欲』が『笑顔』が戻ってき
たのです
『そういえばたくさんのご飯を作って皆んなが美味しい、って食べて笑ってくれることが嬉しくて仕方がなかったな』
そう話されます
そんな先日ご訪問すると娘さんから
『母が餃子を作ったんですよー!』と
60年間、家族のため、お弟子さんのために作り続けてきた餃子。
300個数は余裕で作られていたいはずなのに、もうここ数年作ることは全く無くなっていたのだと言われます。
そんな母が『餃子を作りたいから買い物に連れて行って欲しい』
そう訪問が決まった1週間前からソワソワ
もちろん野菜のみじん切りや下味の処理、練り上げて100個近く包んでくださったのだと。
全て1人で作られる、そして重たいフライパンやストーブで沸かしている重たいヤカンのお湯をフライパンに注ぐ姿。
娘さんも夫も
『人に食べてもらえるのが嬉しいんやろな😊』
そんな後ろ姿を3人で見守り
『下手だけど美味しいから食べてごらん』
『食べて笑顔になってくれる事が1番嬉しいのよ』
60年間の大切な方への愛情がたっぷり詰まった餃子を3人でお腹も胸もいっぱいになるほどいただきました
もちろん数年ぶりのおばあちゃんの餃子を、お孫さんも食べられ喜ばれたと後ほどお聞きしました。
『死ぬまでハサミを持っていたいな』
そこを叶えようと始めたリハビリでしたが、その目標は大前提でありますがその裏にある
『家族の為に』『大切な人のために』おもてなしをしたい。
そんな想いがたくさん込められた料理を通じさらに皆さんが『笑顔』になれるのだと。
『お腹空いたらいつでも帰っておいでね』
大切な家族への想いや、お弟子さんへの思い。そこからもらえる『笑顔』が何よりのお薬なのだと感じます。
また帰りますね😊
※ご本人、ご家族様にブログ掲載承諾いただきました。ありがとうございます
こん