お金を扱う仕事をしていた時、上司から教えてもらったこと。
『貸すも親切、貸さぬも親切』
お金に困っている人に、お金を貸すことだけが親切ではなくて、貸さない事も、ゆくゆくのことを考えれば、その人にとっては結果親切になるんだよ。
そんなことを教えられたことがありました。
その時はあまり深くは考えなかったが、介護の仕事をするようになってから、その言葉の意味がより分かるようになりました。
介護の仕事を始めた時、とにかく楽しい仕事だと感じて、
高齢者の方とお話しする事も楽しかったし、
認知症の勉強や、半身麻痺の方の介助方法、
薬の勉強や、病気の勉強、
全てが新しいことの発見で、介護の面白さと、知れば知るほど、奥が深いことを感じましたね。
小さい頃は、子供達だけで、鹿児島のおじいちゃん、おばあちゃんのところで夏休みや、春休みに行って、過ごしていたので、
高齢者の方と、過ごすことが本当に楽しくて、毎日が充実していましたね。
やり始めた当初は、やってあげることが介護だと思っていて、服を着る時も、頭を洗う時も、トイレでズボンを下げる時も、移動する時も、
全てにおいて、手を出したくて、手を出せば相手は当然楽だし、嬉しいので、
『ありがとう』
と言ってくれる。
そんな『ありがとう』が嬉しくて、介護って楽しいなって、どんどん勘違いしていく。
ある時、車イスの方を街で見かけて、その方は車イスを自分で漕いでいたんです。
とある施設の入り口で、車イス用のスロープがあり、少し傾斜があって登り坂になっている。
私は介護の仕事をしていたので、車イスを押すことは慣れていたし、介護の仕事をしているので、助けられる!
と思って、その方に
『車イスを押しましょうか?』
と言ったところ、その方から言われたことが、
『大丈夫です。自分で出来ますので、迷惑です』
一瞬自分の耳を疑いましたね。
自分では、助けたいと思ってやったことだったので、『迷惑』と言われたことに、理解するのに時間がかかりましたね。
でも、冷静に考えれば、
自分の考えや、価値観、やってあげたい気持ちだけで、その状況を捉えて、その人が望んでいることや、
やったことで、その先どうなっていくかを考えていなかったな、って。
始めは優しさだったり、自分がやってあげたい気持ちで始めた事も、
相手の能力を潰していたり、
相手からもっと求められて、結局自分の負担になったり、
貸したことで、相手も、自分も不幸になっている。
貸さない方が、相手の方も考えて行動するし、自分も負担が増える事もなかった。
優しさでは解決できないことがあると、強く感じましたね。
かわ